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行政書士 二瓶裕史
信州大学を卒業と同時に平成14年「行政書士二瓶事務所」開業。消費者問題・NPO法人の設立からサポートまでを主業務としていたが、近年はより幅広く市民生活サポート、起業家支援に力を入れている。また、積極的に講師業も行っている。
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意外と知られていませんが法律はあなたの身近なものです。
このコーナーではそんな法律を紹介します。得するかも?
○もう一つの紛争解決方法
今日は、ちょっと新しいお話を。
先日、行政書士会で行った公開模擬調停で調停人をやりました。行政書士会で調停とは、これ如何に。調停って、普通は裁判所でやりますよね。
でも、この裁判所の調停というのは、もちろん長い歴史があり信頼も厚く、紛争解決に果たす役割は大きく、これまでの功績には計り知れないものがあります。しかし、これまで法律家が行ってきた紛争解決の手法は、あくまでも「過去の事実」を証拠として集め「法律」を適用させるというものでした。これはある意味、客観的で公正中立な紛争解決手法で、メリットは非常に大きいものがありますし、このような手法がなくなってしまっては、世の中大変なことになってしまいます。しかしその反面では、当事者の一方のみの主張だけが採用され(白黒がハッキリ)、将来に向かっての関係というものはボロボロになってしまうのが通常でしょう。
いま、行政書士会ではそういう裁断型・評価型の調停から脱却し、話し合えなくなった当事者たちの間に入って、当事者が自分たちの力で「対話をしていこう」「解決していこう」と思えるような力づけをしながら、合意形成へもっていくという、「自主交渉援助型調停」の訓練を続けています。調停人が法や事実を元に、ズバッと大岡裁きをするのではなく、当事者の話をしつこいまでにしっかり聴く。耳で聴き、目で聴き、心で聴く。その過程で信頼関係を構築し、主張の裏に隠された本音を話せる場を作り、自然といがみ合っていた当事者が対話を始める。
そんなに簡単なことではありませんが、それが目指すところです。
私はたまたま、平成18年からこの紛争解決手法を研究する委員(ADR特別委員)になっていたおかげで、かなりの時間(いろいろ合わせて200時間くらい?)の訓練を受けたり、最近は講師の側になって話をしたり、ということをしています。認知心理学や傾聴技法、交渉理論、調停技法。それを駆使しつつのロールプレイ。
やってみて思うのは、大変だけど、素晴らしい! 最終的には法律を使わないと解決できない問題があるのは、当たり前です。けれど、法律では動かない(解決できない)多くの問題が、この自主交渉援助型の調停で動く可能性がある。
この自主交渉援助型調停は、裁判や裁判所の調停に「取って代わろう」というものではありません。裁判や裁判所の調停ではうまくいかないところを補う、そういう新しい選択肢の一つになることを目指しているのだと思います。常に当事者の将来を見据え、できることなら「Win-Win」な結論へ、というのを理想として持っています。ときとして、その玉虫色の合意内容によって、双方がいまいちスッキリしないこともあるかもしれませんが・・・。
この紛争解決の技術は、さまざまな場面に導入することができます。師匠である稲葉先生(元判事、現在法科大学院教授)が専門とする医療現場でも大きな力を発揮すると言います。そのほかにも、地域の問題、学校の問題、家庭の問題。
人が集まれば少なからず揉め事は起こってしまいます。それをどうやって解決していくのか。
(1)だれかが「まあまあ」とお互いをなだめるのか、
(2)また他のだれかが「こうしろ!」ときめてしまうのか。それとも、
(3)時間はかかってもお互いが本音を出せる「場」を作り過去のことだけにこだわらず将来のことまでを見据えた話し合いの末に合意するのか。
どれも否定するわけではありません。ただ、自分なら(3)を選びたい。
だから、この考え方・手法をできるだけ広めたい。それが、いま一番やりたいことです。
と、今日はいつもと違った話題になりましたが、これもたまにはいいですよね。
2011/10/18 UP