意外と知られていませんが法律はあなたの身近なものです。
このコーナーではそんな法律を紹介します。得するかも？

○善意の第三者

今回も「成（なる）ちゃん」と「法（ほう）くん」の登場。仕事納めの夜、居酒屋「ナルホドー」で忘年会。

成ちゃん「いやぁ、今年もがんばったね！　ついこの間、夏だと思ったら、もう冬だよ！！　そして、年も変わっちゃうんだよ！！！」

法くん「そ、そうだね・・・。」

成ちゃん「どうしたの！　せっかく明日から休みだっていうのに！　元気ないなぁ。」

法くん「そんなことないよ。うん、明日から休みだね。・・・はぁ（ため息）。」

成ちゃん「もう！　もう！！　何があったっていうの！」

法くん「実は・・・。せっかく学生のときに法律の勉強してたから、行政書士の資格を取ろうと思って、２年前から勉強してたんだよ。で、１１月に受験をして・・・。」

成ちゃん「えっ、それで、落ちたの？？」

法くん「まだだよ！　１月が発表。だから、発表まで憂鬱でね。」

成ちゃん「なんだぁ。まだ落ちてないのか。」

法くん「むむっ！」

成ちゃん「そ、それはそうと、今日も教えてほしいことがあるんだよ。この前、会社で取引先との契約書を見てたら、『善意の第三者』って言葉があったの。第三者が、いい人か悪い人かなんて、そんなのわからないよね。何言っちゃってるの、この契約書！　って怒ったんだよ。そしたら上司に、勉強しなおせ！　って怒られちゃって。」

法くん「ふんふ～ん、なるほどね。」

成ちゃん「なにを得意げに！」

法くん「善意の第三者っていうのはね、いい人、ってわけじゃないんだよ。法律用語では、『善意』とか『悪意』って言葉がよく出てくるけどね、『いい』『悪い』って意味は、まったくないんだよ。結論から言っちゃうと、善意っていうのは、『あることがらを知らないこと』で、悪意は『あることがらを知っていること』なの。」

成ちゃん「えっ、えっ？　知らないのが善意で、知ってるのが悪意？　なにそれ。」

法くん「だめだめ。なにそれ？って考えちゃ。ここはもう、外国語を覚えるつもりで。だから、善意の第三者っていうのは、あることがらを知らない第三者ってこと。」

成ちゃん「外国語・・・。」

法くん「民法を見てみようか。」

第96条（詐欺又は強迫） 1 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。 2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。 3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

成ちゃん「サギ・・・、キョウハク・・・。」

法くん「まず、第１項は、騙されたり、脅されてしてしまった意思表示は取り消すことができるって書いてあるね。騙されて契約しちゃった場合なんかに、取り消せるってこと。次に２項では、相手方以外の誰かに騙されて契約をしちゃった場合、その相手方が『この人、誰かに騙されてるな』って知っていた場合には、取り消せる、ということ。そして、３項で出てきました！善意の第三者。」

成ちゃん「うんうん（ドキドキ）。」

法くん「２項では第三者による詐欺であっても、相手方がそのことを知っていれば取り消せるって書いてあるよね。それなのに、その事情を知らずに、さらに契約に入ってきたような第三者に対しては取消しの意思表示ができないってことなの。つまり、AさんはXさんにだまされて高価な時計を安価でBさんに売ってしまいました。BさんはAさんがXさんに騙されていることを知っています。でも、その時計を、事情を知らないCさんに売ってしまいました。こういった場合、適法に売買が行われていると信じて取引関係に入ってきたCさんを保護してあげる必要があります。ここのCさんを『善意の第三者』というんだよ。」

成ちゃん「善意の第三者。」

法くん「そう。いい人か悪い人かなんて関係ないよね。事情を知らないで取引関係に入ってきたCさんが『善意の第三者』なの。」

成ちゃん「ほうほう。なるほどね。」

法くん「わかってくれたかな。」

成ちゃん「うん。よくわかった。じゃあ、私が法くんより３歳も年下だけど、法くんよりも稼ぎが多いってことを知らない、ナルホドーのマスターは善意の第三者だね！」

法くん「なんか違う・・・。」

2011/12/29 UP