〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。 生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。 |
FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。 フランス映画やイギリス映画が大好きなので、 渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、 日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、 日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、 1週間または2週間と限定して上映しています。 10月10日(土)〜16日(金) まで 毎日11:30と20:30 二人の思い出までも冒されてはかなわない、と選んだ道は銀行強盗。ハンガリーで生まれたコメディタッチのシュールな作品だ。 苦楽をともにしてきた二人は、貧しさも手伝ってほとんど口もきかない倦怠ムード。 しかし、借金取りに、妻の宝物であるダイヤのイヤリングを持って行かれ、夫は決意する。持病のギックリ腰をおして愛車のチャイカを飛ばし、銃を片手に郵便局の窓口で凄んだのだ。 「お嬢さん、頼みがあるんだ。この袋にお金をつめてもらえんか。」 精一杯の脅し文句でお金を手にした彼は「どうもありがとう、良い一日を」なんて丁寧に挨拶をして車に戻る。初回の成功に自信をつけたエミルは、銀行にも挑戦し、やがてヘディも巻き込んで次々、銀行強盗を繰り返す。 夫の勇姿に妻は唖然。惚れ直しての二人旅は、まるでフルムーン旅行のよう。 それまでしょぼくれていた二人の見事な変身ぶりに目を見張る。 瞬く間にマスコミに注目され、英雄扱いされた彼らは、ブレーキを引くこともできず、事態はますます大ごとになってゆく。 なんともアッパレ、痛快な展開だが、暴走する二人には悲しい思い出があり、後半は切なさに胸しめつけられる。 力強く爽やかな傑作である。 「人生に乾杯!」1時間47分 10月10日(土)〜16日(金) まで 毎日11:30と20:30 ハンガリー/ 監督:ガーボル・ロホニ 料金:当日(大人)\1,700 前売券\1,300 (電話予約受付中) 0263-52-0515 於:塩尻・東座(駐車場完備)
〜映画の見方メモ〜
私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。
2009/09/30 UP
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