<心を揺さぶる上映会>FROM EAST
〜協力〜
fromEast
長野県塩尻市大門4-4-8
Tel:0263-52-0515
〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。
生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。

上映会メニューへ
FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。
フランス映画やイギリス映画が大好きなので、
渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、
日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、
日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、
1週間または2週間と限定して上映しています。
「シリアの花嫁」1時間37分
11/21(土)から27(金) 毎日 10:30/20:30
シリアの花嫁
現在、世界のどこかで無国籍の人々が存在する事実を、どれだけの人が知っているのだろう。1967年の第三次中東戦争によりイスラエルに占領されたゴラン高原のマジュダルシャムス村は、もとはシリア領。そのときから多くの住民たちは無国籍となり、境界線の向こうにいる家族のもとへも行かれなくなってしまった。分断された彼らは「叫びの丘」と呼ばれる場所に拡声器を持って立ち、向こう側の家族に近況を伝える。手を振れば見える距離なのに、行き来が全くできないとは、悲しすぎる現実である。

この映画の花嫁が選んだのは、国境の向こう側にいるTV俳優だった。
家族に見守られ花嫁側だけのにぎやかな祝宴のあと、花嫁は家族とともに境界線へ向う。ところが頭の固い係官により、通行証に判を押してもらえず、一家は愕然と立ち尽くす。
シリアの花嫁

花嫁だけでなく、保守的な夫への不満を募らせる姉や、ロシア人と結婚したばかりに勘当されている長兄、お調子者の次兄、親シリア派で警察に目をつけられている父など、一家が抱える様々な問題も次第に浮上してくる。それなのに画面に決して重々しい空気が漂わないのは、彼らに生への執着と逞しさが根付いているからなのだろう。

その中でもっとも共感するのは、大きな過渡期を迎えた姉の前向きな姿だ。
彼女は、妹が旅立つその日、頑固で意固地な夫に抵抗し、自分のための人生を歩き始めようと決意する。その潔さ、凛々しい行動力に、われわれは、この国の希望を見いだすことができる。

果たして花嫁は無事にシリアへ渡れるのだろうか。
その答えの前に、花嫁を取り巻く人々のそれぞれの勇気と優しさに胸が詰まる。

「シリアの花嫁」1時間37分
11/21(土)から27(金) 毎日 10:30/20:30
イスラエル/フランス/ドイツ/ 監督:エラン・リクリス
料金:当日(大人)\1,700 前売券\1,300
(電話予約受付中) 0263-52-0515
於:塩尻・東座(駐車場完備)


〜映画の見方メモ〜
 私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。



2009/10/21 UP