〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。 生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。 |
FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。 フランス映画やイギリス映画が大好きなので、 渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、 日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、 日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、 1週間または2週間と限定して上映しています。 3月13日(土)から19日(金) 毎日 10:30/20:30 結婚は本人同士の愛情で決意するものではなく、あくまで財産重視、階級を尊重するものとされていた時代。オースティン夫妻の末娘ジェインだけは押し付けられた考え方を無視していた。愛のために結婚したいと夢を見る彼女は、親が望む地元名士の息子には興味を示さず、貧しい弁護士の卵に心を惹かれてゆく。 知性と教養の価値観も感性も似ている二人は、瞬く間に恋に落ちるが、当然のことながら回りは賛成しない。 結婚生活を送るための資金もない二人は、果たして恋を成就できるのだろうか。 言うまでもなく「プライドと偏見」は、ジェイン自身の経験をもとに書かれた小説だ。それだけに筋書きは似ているが、相手が貧しい青年という現実は、思いがけない展開をもたらす。 自分だけの恋心を貫くことは許されるのか。貧しくても愛があれば幸せなのか。仕事と結婚は両立できるのか。往々にして女性が日々悩む結婚への疑問は、18世紀から何も変わらず受け継がれてきたようだ。 ジェインを演ずるアン・ハサウェイと、相手役のジェームズ・マカヴォイは、美しさも演技力も抜群だが、何より二人の呼吸がぴったりでまるで前世から結ばれていたかのような絆すら感じられる。 加えてジェインの両親を演ずるジュリー・ウォルターズとジェームズ・クロムウェルの、大らかで庶民的な雰囲気がすばらしい。決して悪気はないが、一家の未来のために、財産家に娘を嫁がせようと躍起になる母親と、娘の文才をいち早く見抜き、応援する偉大な父親時のあふれんばかりの愛情が画面から伝わって、われわれの心を温かく満たしてゆく。 衣装や背景の設定も繊細で緻密。観る者は一気にのどかな英国の片田舎へとワープすることだろう。 「ジェイン・オースティン 秘められた恋」120分 3月13日(土)から19日(金) 毎日 10:30/20:30 イギリス/アメリカ 監督:ジュリアン・ジャロルド 料金:当日(大人)\1,700 前売券\1,300 (電話予約受付中) 0263-52-0515 於:塩尻・東座(駐車場完備)
〜映画の見方メモ〜
私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。
2010/03/07 UP
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