〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。 生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。 |
FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。 フランス映画やイギリス映画が大好きなので、 渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、 日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、 日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、 1週間または2週間と限定して上映しています。 4月24日から30日 毎日10:30/20:30 原作は、1894年に書かれた「副王たち」という小説。ビスコンティ監督が映画化した「山猫」の原作はこの小説から多大な影響を受けて書かれたたと言われる。 人間の欲望と野望が渦巻く貴族社会の裏側を、華やかに描いた重厚な作品だが、封建的で権威主義の父親と、その傲慢で横暴な人間性に反発して育った息子の、生涯にわたる確執は、時代を越えて、現代人のわれわれにも共通する人生観を呼び起こす。 そして7年後、ブルボン王朝によるシチリア支配にも衰退の影が見え始めていた。それでも父は、自己の利益と名声を重んじ、権力行使を続けながら、したたかに生きていた。 そんな父にさらなる憎悪を募らせ、新しい時代を切り開く術を思案する息子。やがて父と息子は和解することなく永久の別れを迎えることになる。 ようやく父親の足かせがはずれ、息子は実権を握る立場に立つが、どうしても父の呪縛から逃れることができない。 権力者の性(さが)だろうか。「歴史は繰り返す」ことを証明するような展開に現社会の政界も重なるが、愛を重んじ、権力を憎んでいたはずの息子が次第に父親に似て来る過程が興味深い。 果たして彼は、新たな時代の始まりに何を決断するのだろう。 絢爛豪華な背景に、イタリア一美しいと言われるアレッサンドロ・プレツィオージの颯爽とした貴族姿が良く映える。その端正な顔立ちと落ち着いた物腰は、女性たちの心をたちまちのうちに虜にしてしまう。 父親に扮したランド・ブッツァンカは、名作「ベンハー」で映画デビューし、イタリアを中心に長年活躍してきたコメディ俳優である。その意外なキャスティングに、誰もが驚いたと言うが、威厳ある貴族の長にふさわしい貫禄で存在感を示している。 「副王家の一族」126分 4月24日から30日 毎日10:30/20:30 イタリア 監督:ロベルト・ファエンツァ 料金:当日(大人)\1,700 前売券\1,300 (電話予約受付中) 0263-52-0515 於:塩尻・東座(駐車場完備)
〜映画の見方メモ〜
私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。
2010/04/05 UP
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