〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。 生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。 |
FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。 フランス映画やイギリス映画が大好きなので、 渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、 日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、 日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、 1週間または2週間と限定して上映しています。 6月12日(土)〜18日(金) 毎日 10:00と20:30 ストラヴィンスキーの<春の祭典>は、あまりに斬新であったため、初演の会場はブーイングの嵐だった。しかし、ココ・シャネルはその凄まじい楽曲に胸打たれ大きな衝撃を受ける。それから7年後、二人は運命の出会いを果たす。折しもココは、最愛のボーイ・カペルを亡くし、夢中で仕事に打ち込んでいた時期だった。ココは、ロシア革命で財産を失ったストラヴィンスキーに援助を申し出て、彼の一家ごと自宅に招き入れる。 数少なく淡々と互いの仕事をこなしながら、強く惹かれ合う二人。芸術家同士、相通ずる感情の波をぶつけ合いながら、ココは香水「シャネルNo.5」を生み出し、ストラヴィンスキーは<春の祭典>の再演を成功させる。 近年のシャネルブームで、シャーリー・マクレーン、オドレイ・トトゥと、たて続けにシャネルを演じているが、今回のアナ・ムグラリスがもっとも本物に近いように思う。デザイン室での厳しいまなざしはもとより、自分の服をどんなモデルより着こなしてしまうエレガントな立ち居振る舞い、低めの声が、近づきがたいココ・シャネル独特の世界観を創り出している。アナは実際にシャネルブランドのモデルも務めているからだろうか。シャネルを知り尽くした優美と凛々しさが身体全体から漂う。 そしてストラヴィンスキーを演ずるマッツ・ミケルセンのセクシーなたたずまいにも魅了される。「007 カジノロワイヤル」で見せた悪役の冷たさとはまた違う、クールな眼差しが観る者のハートをズキンと射抜く。 シャネルの意志を継ぐカール・ラガーフェルドが、当時のデザインを再現した衣裳の数々にも注目したい。 「シャネル&ストラヴィンスキー」119分 6月12日(土)〜18日(金) 毎日 10:00と20:30 フランス 監督:ヤン・クーネン 料金:当日(大人)\1,700 前売券\1,300 (電話予約受付中) 0263-52-0515 於:塩尻・東座(駐車場完備)
〜映画の見方メモ〜
私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。
2010/05/26 UP
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