<心を揺さぶる上映会>FROM EAST
〜協力〜
fromEast
長野県塩尻市大門4-4-8
Tel:0263-52-0515
〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。
生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。

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FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。
フランス映画やイギリス映画が大好きなので、
渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、
日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、
日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、
1週間または2週間と限定して上映しています。
「フローズン・リバー」97分
7月17日(土)〜23日(金)毎日 10:00と20:30
新人監督の登竜門であるサンダンス映画祭で、クエンティン・タランティーノ監督に絶賛され、みごとグランプリを獲得した作品。主演のメリッサ・レオは、この作品で米アカデミー賞主演女優賞にノミネートされている。
フローズン・リバー

NY州再北部の町と、カナダとの国境を挟むセントローレンス川は、冬の氷点下で凍り付き車も通れるほど厚い氷が張る。だが所詮は川の氷。所々薄くなり湖に張る氷ほど頑丈ではない。そこを車で行き来して、不法移民の密入国でお金を稼ぐ二人の女性がいた。
フローズン・リバー


ひとりは白人の中年女性レイ(メリッサ・レオ)。もうひとりはモホーク族の若い女ライラ(ミスティ・アップハム)だ。レイは、ギャンブル好きの夫に全財産を持ち逃げされ、二人の息子を育てるために必死て働いている。ライラは夫に先立たれ、生まれたばかりの子供を義母に取られて、なんとしてでも取り返したいとお金を溜めている。精神力も環境もギリギリの状態で出会った二人は、高額を得られる危険な仕事に手を染めながら、緊迫の日々を送っていた。

子供を守るため、命がけで車を走らせる女たちの気迫が、間断なく画面から押し寄せてくる。先が見えないスリリングな展開に鼓動が速まるが、母性がなせるしたたかさと奇跡を信じながら二人の未来に光明が射すことを祈る。

フローズン・リバー
監督のコートニー・ハントは、2004年に本作の短編を作り、さらに肉付けをして長編に仕上げた。彼女自身も、シングルマザーの母親に育てられ、その苦労を垣間見て来たため、リアリティあふれる脚本が書けたのだろう。自分を犠牲にしても息子たちに尽くそうとする母の愛と、その母を助けたくて悪事に手を染める息子の愛が、トレーラーハウスの前で行き交う。
登場人物ひとりひとりの心情をしっかり描き、観客を画面に惹き込む演出がみごとだ。女たちの逞しさに感動しつつ、なぜこうも世の中は、男に比べ女の方が稼ぎが少ないのかと悔しさがこみあげる。

「フローズン・リバー」97分
7月17日(土)〜23日(金)毎日 10:00と20:30
アメリカ 監督:コートニー・ハント
料金:当日(大人)\1,700 前売券\1,300
(電話予約受付中) 0263-52-0515
於:塩尻・東座(駐車場完備)


〜映画の見方メモ〜
 私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。



2010/07/04 UP