〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。 生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。 |
FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。 フランス映画やイギリス映画が大好きなので、 渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、 日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、 日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、 1週間または2週間と限定して上映しています。 8月21日(土)から27日(金) 21日のみグッドモーニングショー8:30あり ※一律千円 夜は8:30 (料金は通常どおり) 22日から27日は朝10:00 夜8:30 料金は通常どおりです。 豊かな感性というのは、他人を淡々と見つめることから育まれてゆくものではないか、と思う。 フランス映画、とりわけパリを舞台に描かれる作品には、街並みも含めて、静かに光景を眺める描写が多い。「あの夏の子供たち」にも、そんなシーンがいくつか登場する。 主人公のは、辣腕映画プロデューサーで、四六時中、仕事に追われ、近年の不況に振り回されている。しかし家に帰れば良き父親、良き夫。休暇には家族を郊外に連れて行き、外国旅行もセッティングする。ただし常に2台の携帯電話は離さない。 そんな彼が、ある日突然、命を断つ。 ここまでの描写があまりにも丁寧なので、私たちはまさかの出来事に唖然とするが、本題はここから始まるのだ。 主人公を彼の妻にバトンタッチして、後半は、彼の会社と映画を守ろうと努力する妻と、はじめて父親の身辺に興味を持った長女にスポットライトを当てる。 悲しい話でありながら、不思議と暗く沈んだ思いにとらわれないのは、パリ郊外や街並みを照らす陽光のせいだろうか。それとも二女と三女の屈託のない笑顔のおかげなのだろうか。 あとに遺された女たちは、衝撃と絶望の渦中にあっても、以前と同じように笑顔を見せ、同じように生活を続けて行く。そんな逞しさとしなやかさが、観る者に大きな勇気と希望を与える。 監督は若干28歳のミア・ハンセン=ラヴ。 パリ育ちの彼女もやはり通り沿いのカフェに座り、道行く人々を静かに眺めて創造力を養ったのだろう。 湛然な人物描写とシンプルな映像センスに拍手を贈りたい。 「あの夏の子供たち」110分 8月21日(土)から27日(金) 21日のみグッドモーニングショー8:30あり ※一律千円 夜は8:30 (料金は通常どおり) 22日から27日は朝10:00 夜8:30 料金は通常どおりです。 フランス 監督:ミア・ハンセン=ラヴ 料金:当日(大人)\1,700 前売券\1,300 (電話予約受付中) 0263-52-0515 於:塩尻・東座(駐車場完備)
〜映画の見方メモ〜
私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。
2010/08/10 UP
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