〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。 生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。 |
FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。 フランス映画やイギリス映画が大好きなので、 渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、 日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、 日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、 1週間または2週間と限定して上映しています。 2月12日から18日まで 毎日10時と20時30分 料金-当日券(大人)1,700円 「オーケストラ」は、まさにそんな興奮を観客に与える傑作映画、とりわけクライマックスの演奏シーンは、演技者と観客が一体化しトランス状態を生み出すほどすばらしい。 舞台は現代のロシア。ボリショイ交響楽団の劇場で、清掃員として働くアンドレイは、30年前まで楽団の主席を務める著名な指揮者だった。当時彼は、共産主義のユダヤ人差別に反発したため、ユダヤ系の演奏家とともに解雇されてしまったのだ。そんなある日、彼はパリの劇場が、急遽キャンセルした交響楽団の代わりを探ているという情報を得る。そこで思いついたのが、ボリショイの名を騙って渡仏し復帰すること。かくしてアンドレイはモスクワの街に散らばった昔の仲間たちを集め始める。 長年音楽とは疎遠の彼らが、果たしてオーケストラを編成できるのか、一見荒唐無稽な話だが、しいたげられた人々がトラウマを克服するというシリアスなテーマを、上質のユーモアで包んだ描写が、不思議とすべてを納得させる。 コンサートの演奏曲はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ソリストには世界的に有名なアンヌ=マリー・ジャケを指名して、アンドレイは沈黙の30年間、胸に秘めた思いの長けをコンサートにぶつける。 オーケストラ!(La Concert) 2時間4分 2月12日から18日まで 毎日10時と20時30分 フランス 監督:ラデュ・ミヘイレアニュ 料金:当日(大人)\1,700 前売券\1,300 (電話予約受付中) 0263-52-0515 於:塩尻・東座(駐車場完備)
〜映画の見方メモ〜
私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。
2011/02/10 UP
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