<心を揺さぶる上映会>FROM EAST
〜協力〜
fromEast
長野県塩尻市大門4-4-8
Tel:0263-52-0515
〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。
生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。

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FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。
フランス映画やイギリス映画が大好きなので、
渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、
日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、
日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、
1週間または2週間と限定して上映しています。
冬の小鳥 1時間32分
3月19日から4月1日まで
毎日10時と20時30分
韓国・フランス合作作品 監督:ウニー・ルコント
料金-当日券(大人)1,700円

冬の小鳥
1975年のソウル郊外。9歳のジニは、よそ行きの服を着て大好きな父親との遠出を楽しんでいた。
やがて父親は子どもたちが大勢いる建物にジニを連れて行き、そのまま去って行く。そこはカトリックの児童養護施設だったのだ。取り残されたジニは、捨てられたとは信じられず、父親が必ず迎えに来ると言い張って頑なに心を閉ざす。脱走を試みたり反抗的な態度を取ったりと、ひとり孤立するジニに手を差し伸べたのは、外国へ養女に行くことを夢見る年上のスッキだった。やがて二人は親しくなり、庭で傷ついた小鳥を介抱し、ジニはスッキの、一緒に養女に行こうという言葉に揺れるが、結局スッキはジニを置いて旅立ってしまう。小鳥も死に、二度目の置いてきぼりに深く傷ついたジニは、ある決意をする。
冬の小鳥
ここからの後半、ジニの変化が見どころであり「冬の小鳥」というタイトルの意味が胸に静かに落ちて来る。なぜ父親は娘を捨てたのか、その理由は最後まで明かされない。わかったところで捨てられたジニの悲しみは変わらないからだ。あくまでジニの目線、ジニの感性で描き通した演出がすばらしい。少女の絶望と悲しみを真っ向から受け止めつつ、われわれは、わずかな希望が胸に広がってゆくのを感ずる。それは、この話が監督自身の実体験であり、新たな人生を自由に生きている現在の監督が、9歳だった頃の自分にエールを送っているからに他ならない。
冬の小鳥
ジニを演じているのは演技経験のない少女だという。だからこそ嘘が交じる芝居ではなく、ひたすら父親を待つ少女に丸ごと乗り移れたのだろう。脇を固める実力派女優たちのリアルな演技にも目を見張る。観終わってふと甦るのは9歳の頃の思い出。多感なあの頃の自分が愛おしくなる。



冬の小鳥 1時間32分
3月19日から4月1日まで
毎日10時と20時30分
韓国・フランス合作作品 監督:ウニー・ルコント
料金:当日(大人)\1,700 前売券\1,300
(電話予約受付中) 0263-52-0515
於:塩尻・東座(駐車場完備)


〜映画の見方メモ〜
 私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。



2011/03/23 UP