〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。 生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。 |
FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。 フランス映画やイギリス映画が大好きなので、 渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、 日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、 日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、 1週間または2週間と限定して上映しています。
「地上5センチの恋心」Odette Toulemonde 8/16日(土)〜22日(金)
16,20,21,22は夜8:30 17,18,19は朝9:00と夜8:30 上映時間=1時間40分 デパートのエスカレーターが映し出される冒頭からハッピーな気分 にさせてくれるこの映画。カトリーヌ・フロというフランスの大女優 のたまご型の顔がクロース・アップされると、 もう、ワクワクが止まらない。 彼女の唯一の楽しみは、寝る前に大好きなロマン小説を読むことで その作家バルタザールにあこがれている。そんなオデットが彼にファン・ レターを書いたことから平凡な日常が一変し、夢が現実へと舞い降りる のだ。オデットは、優しくて気配りができて、しっかりもので大らかで...と われわれ女性にとっての理想的な女性。だから彼女の一挙手一投足に 共感を抱き、彼女が浮かれて唄う歌をともに口ずさみ、彼女の戸惑い や悲しみに寄り添うことができる。何てすばらしい映画だろう。 観る者すべてをバラ色の気分にさせて、人生はいろいろあるけれど 何でも笑顔で乗り切れるのだと勇気をもらう。 人気作家は、実は孤独な小心者でロマン小説を書いていても愛に飢えて いる。働きものの主婦は常に心穏やかで、ポワーンとしているけれど実は 大変なしっかり者。人間見かけや肩書きだけでは中身はわからない。 登場人物全員に共感できてうなづけて、心が軽やかになる最高の フランス映画です。 16,20,21,22は夜8:30 17,18,19は朝9:00と夜8:30 上映時間=1時間40分
〜映画の見方メモ〜
私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。
2008/07/22 UP
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