映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、
結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。
生まれた時からスク リーンの前にいるので、
数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、
現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。
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FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。
フランス映画やイギリス映画が大好きなので、
渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、
日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、
日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本~2本、
1週間または2週間と限定して上映しています。
アルゼンチン映画/1時間30分
4月14日から20日
毎日10:00/20:30
料金:当日券(大人)¥1,700 前売券¥1,300(電話予約可)
人生はたびたびジグソーパズルにたとえられる。思い描いた青図のパーツを懸命に生き、時に全体像が見えなくて苛立つが、投げ出さなければ必ず理想の絵が完成する。歳を重ねて気づくのは、最後のピースをはめ込む達成感より、夢中でピースを探す過程が楽しいということだ。
この映画のヒロイン、マリアも日常の中にそんな喜びを見つけた。実際彼女はジグソーパズルに魅せられるのだが、専業主婦としての役割をほぼ終えた50歳から、まるで恋をしたかのように輝きはじめる。
きっかけは誕生パーティー。割れた皿の破片をかき集め継ぎ合わす作業が楽しくて、プレゼントにもらったパズルの箱を開けた。「私には才能があるのかもしれない」そんな自覚が臆病だった彼女に自信をつけさせ生き甲斐をもたらす。パズル専門店で見つけた「大会のパートナー募集」の広告に惹かれたマリアは、大富豪で独身の紳士ロベルトに出会い指導を受ける。しかし夫は「パズル?」と一笑に付し、こんなものに夢中になってと怒り出す始末。息子たちも自分の仕事に精一杯で聞く耳を持たず、孤立したマリアはますますジグソーパズルにのめりこむ。
舞台はアルゼンチンの首都ブエノスアイレス。異なる人種が共棲しエキゾチックな美しさを放つこの街もまたジグソーパズルのようだ。緑が溢れる庭、鮮やかな配色のインテリアや衣裳、スパイスの効いた音楽を背景に、マリアを演ずるマリア・オネットの演技が光る。人生の踊り場で足踏みしながら行動を起こし、勇気を持って先へ進む、その戸惑いや緊張、喜びの心情を、豊かな顔の表情と優雅な身のこなしでリアルに伝える。カメラ、脚本、照明、小道具と、あらゆる要素をパズルのように繋ぎ合わせた女性監督ナタリア・スミルノフの軽やかな演出も実に見事。春の陽を浴びて大きく伸びをするように、新しい一歩への意欲が湧く秀作だ。
アルゼンチン映画/1時間30分
4月14日から20日
毎日10:00/20:30
料金:当日券(大人)¥1,700 前売券¥1,300(電話予約可)
(電話予約受付中) 0263-52-0515 於:塩尻・東座(駐車場完備)
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2012/04/13 UP
私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。