映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、
結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。
生まれた時からスク リーンの前にいるので、
数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、
現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。
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FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。
フランス映画やイギリス映画が大好きなので、
渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、
日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、
日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本~2本、
1週間または2週間と限定して上映しています。
イタリア映画/2時間
6月16日(土)から22日(金)
毎日 10:00/20:30
料金:当日券(大人)¥1,700 前売券¥1,300(電話予約可)
ロシアの旧家からミラノの上流家庭に嫁いだエンマは、3人の子供を育てあげ、長い年月、妻としての役割も完璧にこなしてきた。そんな彼女を予期せぬ感情が襲う。一流のシェフであり長男の親友でもあるアントニオに恋をしてしまったのだ。一心不乱に食材と向き合い、甘美な芸術に仕上げるその技に惹かれ、エンマは料理と彼自身の虜になってゆく。口実を見つけては逢瀬を重ね、恋情に身を投げたエンマは、髪を切り、かつて味わったことのない開放感の歓びに浸る。そんな母親と親友の関係に気づかず、長男はその頃、家業の問題に悩み、母の力を必要としていた。だが恋に夢中のエンマは息子の苦悩を知る由もない。そして、悲劇が訪れる。
サスペンスの展開はヒッチコック、映像美はヴィスコンティを彷彿とさせる上質なメロドラマだ。エンマを演ずる名女優ティルダ・スウィントンの衣裳はジル・サンダー。英国に倣いシンプル&エレガンスをモットーとするイタリア・ハイソサエティの着こなしとたたずまいに思わずため息が出る。上品で静謐な暮らしを背景に、エンマから立ち上る香華とほとばしる情熱が、観る者をたちまちのうちに高揚させる。しかし、最初から最後までエンマにつきまとう孤独感。それがやがて彼女の本当の武器となり、新しい人生を切り拓く原動力となる。
人生半ばを過ぎた大人の女にとって、恋はすべてを賭けるものではなく、賭けるべきものへの踏み台なのかもしれない。だから勇気ある女の晩年は華々しいのだ。
プロデューサーでもあるティルダ・スウィントンの見事なイタリア語にも注目したい。
スクリーンで観るべきイタリア映画の傑作。
イタリア映画/2時間
6月16日(土)から22日(金)
毎日 10:00/20:30
料金:当日券(大人)¥1,700 前売券¥1,300(電話予約可)
(電話予約受付中) 0263-52-0515 於:塩尻・東座(駐車場完備)
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2012/06/07 UP
私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。