<心を揺さぶる上映会>FROM EAST
〜協力〜
fromEast
長野県塩尻市大門4-4-8
Tel:0263-52-0515
〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。
生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。

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FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。
フランス映画やイギリス映画が大好きなので、
渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、
日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、
日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、
1週間または2週間と限定して上映しています。
「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」Away From Her 9/13(土)〜19(金)
毎20:30 平日朝10:30あり

カナダ映画/1時間50分 監督:サラ・ポーリー
出演:ジュリー・クリスティ ゴードン・ビンセント オリンピア・デュカキス

 結婚生活44年目になるフィオーナ(ジュリー・クリスティ)とグラント(ゴードン・ビンセント)は、互いを信頼し合い、湖沿いの別荘で理想の生活を送っている。昼間は大自然の恵みを満喫し、夜は共にキッチンに立ち、夕食が終わると小説を読み 語り合う、静かで温かい日々を過ごしていた。ところがある日、フィオーナが突然妙な行動を取るようになる。何気なくフライパンを冷蔵庫にしまったり、ワイン片手にそれが何であるかを忘れてしまったり、その症状は明らかにアルツハイマーの前兆だった。やがて外で道に迷うようになったフィオーナは、自ら介護施設に入ることを希望する。
アウェイ・フロム・ハー 君を想う
サラ・ポーリー監督が原作に惹かれたのは、ここから先の夫婦愛だという。施設に入って30日間は面会を許されず、ようやく夫が妻を訪ねたとき、妻は全く夫を覚えていなかった。あなたはどなた?と夫に微笑み別の入居者の世話をやく妻を前に、夫は戸惑う。だが我々は、しばらくして、彼女は認知症を装っているのではないかと思い始める。彼女の心の奥には、忘れられない苦い思い出があったのだ。
長い間人生を共にしてきた夫婦にも、互いに明かせない感情があるが、それをあえて伝えずに幕を閉じようとするのが賢明な選択なのかもしれない。夫と妻の互いに異なる愛情表現を画面の中で探りながら、男は単純でも女よりはるかに優しいとつくづく思う。
それにしてもジュリー・クリスティーの気高き美しさには終始圧倒される。
知性と教養にあふれ、謙虚で穏やかなフィオーナは演ずるまでもなくジュリーそのものなのだと思う。こんな風に歳を重ねて生きてゆきたいと、女性なら誰もが彼女にあこがれるに違いない。今年のFROM EAST ベスト1の作品です。

※監督は「スウィート・ヒアアフター」や「死ぬまでにしたい10のこと」で注目されたカナダが生んだ偉大なる女優サラ・ポーリー。女優のみならず短編映画の監督としても高い評価を得ている彼女が、原作に惚れ込み初めて長編映画に挑戦した。
本年度のゴールデン・グローブ主演女優賞、アカデミー賞主演女優賞、脚色賞ノミネート作品。
アウェイ・フロム・ハー 君を想う

「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」Away From Her 9/13(土)〜19(金)
毎20:30 平日朝10:30あり


〜映画の見方メモ〜
 私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。



2008/08/25 UP