<心を揺さぶる上映会>FROM EAST
〜協力〜
fromEast
長野県塩尻市大門4-4-8
Tel:0263-52-0515
〜執筆者紹介〜
映画コラムニストの合木こずえです。
映画館で生まれ育ち、役者を目指して 進学し、 結局映画の仕事に戻ったはぐれ者です。
生まれた時からスク リーンの前にいるので、 数限りなく観た映画のシーンが常に頭を駆け巡り、 現実の中にそれを求めて落胆ばかりしています。

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FROM EASTは、
1995年に一旦東京を引き揚げて来たときに作った上映会です。
フランス映画やイギリス映画が大好きなので、
渋谷のBunkamuraル・シネマや銀座のシネ・スイッチ、
日比谷のシャンテ・シネなどで上映される作品を選定して、
日本映画の秀作も織り交ぜ、毎月1本〜2本、
1週間または2週間と限定して上映しています。
「夜顔」Belle Toujours  10/11(土)〜17(金)
毎20:30 平日朝10:30あり

フランス映画/1時間10分 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:ミシェル・ピコリ、ビュル・オジェ


裕福な家庭の貞淑な主婦が、夫を愛しながらも、日中、娼館で働きはじめる......。
ルイス・ブニュエル監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の『昼顔』は、1960年代当時、一大センセーショナルを巻き起こした。物語は、主婦セヴリーヌが、車椅子の生活になってしまった夫に献身的に尽くすという結末に落ち着いたが、その美しい顔の奥に潜む心理は明らかにされていない。
今年100歳になる巨匠オリヴェイラ監督は、ブニュエルに敬意を表して「38年後のセヴリーヌと当時の秘密」を映画化した。
あの時の、彼女の欲望はどんなものだったのか。あれから夫婦はどうなったのか。
好奇心をそそる秘密の箱をこじ開けようとするのは、夫の友人だったアンリだ。
ミシェル・ピコリ扮するアンリは、とある演奏会でセヴリーヌの姿を見つけ、懐かしさに思わず追いかける。
歳を重ねると、若かりし日の過ちを冷静に見ることができる。若さが武器だったと気づく頃は、すでに人生も半ばを過ぎ、当時の感情も風化して思い出話になるものだ。しかしセヴリーヌには誰にも言えない胸の奥に沈めた秘密があった。
向かい合って過去を探ろうとするアンリ。だがアンリ自身も当時気づかなかった思いにとらわれる。
「夜顔」Belle Toujours

老練な演技でベテランの味をさらりと出すミシェル・ピコリの、芸の集大成がここにある。
ところどころに散りばめられたルイス・ブニュエルへのオマージュ。
そのひとつが唐突に登場するニワトリだ。人間と違って本能だけで行動するニワトリは倫理の欠如を示しているという。
ブニュエルの「ブルジョワジーの密かな愉しみ」('72)で一斉を風靡したビュル・オジェがドヌーヴの代わりに晩年のセヴリーヌを品良く演じている。

すばらしいのは何世紀も変わらずパリを彩る歴史ある建物と街並み。
バリを愛してきた大いなる監督の目に映る風景には、監督の生きた重みまで映し出されている。100歳万歳!
「夜顔」Belle Toujours

「夜顔」Belle Toujours  10/11(土)〜17(金)
毎20:30 平日朝10:30あり


〜映画の見方メモ〜
 私の上映会には「通りすがりに時間つぶしのために、ふらっと立ち寄る」方はいません。皆さん、この日は映画を見る、と計画し、スケジュール調整し仕事や家事を片付けてわざわざ来て下さる映画ファンばかりです。ですから当然ながら携帯電話の電源は切って下さいますし、上映中の私語や物音も極力慎んでいらっしゃいます。それは映画に限らず、他人と芸術を共有する場合の最低限の決まり事です。でも芝居やコンサートを観に行くと、必ず無神経な音を出したり携帯の画面を光らせたりする方がいます。そういう方は多分プライオリティーが「そこ」にはないのでしょう。だったら来ないで下さいと言いたくなりますね。ひとつの素晴らしい芸術を他人と一緒に味わう、という歓びは、マナーを守るという思いやりがあってこその感動だと私は思います。



2008/09/22 UP