+第21回定期演奏会+ 11月9日(日)長野県伊那文化会館 ベートーベン:交響曲第7番 ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ソリスト:日下紗矢子(ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団第1コンサートマスター) 指揮:征矢健之介(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団) |
上伊那唯一のオーケストラ、伊那フィルハーモニー交響楽団
伊那谷の音楽シーンを作っていると言っても・・・いいんじゃない? とにかく、音楽漬けの毎日を送っている伊那フィル団員さんに 音楽について"なんでも"語っていただくコーナーです。 クラッシックはもちろん、音楽だったらなんでもあり! ヒンデミットって誰?? パウル・ヒンデミット作曲 ウェーバーの主題による交響的変容 平成8年、静岡県富士市から伊那に転勤してきたその春、駒ヶ根市の文化会館で 地元オーケストラである伊那フィルハーモニー交響楽団のコンサートは確か、 ファリャの三角帽子を聴きに行った。「小難しい曲をやるなぁ」と思いつつ、演 奏終了後に楽屋を訪ね「入団したいのですが・・・」「ここに名前と住所と電話番 号を書いて」と渡された紙は、何か、コンサートチラシの裏だったような気がす る(気のせい?)。 入団してしばらくすると、秋の定期演奏会の曲目を決めることに。ヒンデミット の「ウェーバーの主題による交響的変容」が候補にあがっていて、みんなで聴く ことになった。今はあまり練習に使わなくなった西春近の商工会館だったと思 う。「Kさん!このフルートのソロ、何とかなるでしょう」「ゼッタイ、ム リ!!」「大丈夫だよ。この曲に決定」。いま思うと決め方もなんだか強引だっ た。 なんとか曲になったと思うけれど、最後までファーストヴァイオリンは難しい パッセージに悩んでいて、本番は確かうまくいった。あとでその時の指揮者(河 津さん)もこの曲を楽しんだと聞き、うれしくなったものだが、団員の評判はあ まりよくなかった。きっと聴衆の評判もよくなかったのかも。 作曲したパウル・ヒンデミットは1895年に生まれ、1963年(昭和38年)に亡く なった近代ドイツの作曲家。第2時世界大戦時は作風がナチスの意にそぐわず、 アメリカに亡命。多くの作品の調性は不安定で、いわゆるモーツァルトのような 心地よい音楽とは言えない。 最初にこの曲を聴いたとき、元となるウェーバーの主題もどれだかわからず「本 当に演奏ができるのか」と思ったものだ。繰り返しCDを聴いてみると、けっこう 楽しい。弾いてみると、90%苦しくて90%楽しい。足して100%にならないのが音 楽の楽しみと苦しみ。そんな選曲に、地方のそれほど上手でもないアマチュア オーケストラ(失礼!)が「チャレンジするなんてスゴイ!」と思ったが、残念 ながらこれ以降は保守的な選曲が多くなるのだった。しかし、それから約10年。 ご存知のように2007年の第20回定期演奏会、伊那フィルはベルリオーズの大作 「幻想交響曲」に挑戦したのだった。 そんな想い出のヒンデミット/ウェーバーの主題による交響的変容。ウェーバー の付随音楽「トゥーランドット」と「ピアノ連弾曲集」からの四つの自由な変奏 曲。主題となるウェーバーのどちらの曲も、あまりにもマイナーすぎて、よほど の音楽通でも聴くことはないだろう。自分も聴いたことがない。紹介する交響的 変容は4楽章で構成され、20分ほどの曲です。ウェーバーの主題を借りた恩恵 で、ヒンデミットの作品の中ではわかりやすいと思う。効果的なティンパニ、 鐘、小太鼓などの打楽器ソロ。美しいフルートのソロ。複雑でも構成を忘れない 豪華なトュッティ。どこか滑稽で、どこか真面目。ヒンデミットらしいインテリ ジェンスが満載。 紹介する曲としては異端? 世の中、おもしろい曲はたくさんあるのです。色々 なおもしろさを受け入れることができるなら、クラシックの世界はとても広いこ とがわかります。名曲の紹介だったら私が紹介しなくてもよいかな。そんなアマ ノジャク的な紹介でよいのかしら。 演奏はあまりスリムでも、ほぐれない固まりでも面白くない。オーケストラの性 能が良く、この曲への愛情を感じるアバド/ベルリンフィル(独グラモフォン) の演奏がおすすめ。もし聴きたいと思ったとき、近くのCDショップの店頭にない 場合が多いでしょう。最近はインターネットのオンラインショップを利用するこ とも多いのですが、手に取って悩む店頭販売の魅力は捨てがたいですね。大都会 以外はCDショップは衰退するのでしょうか。できれば性能のよい再生装置で少し 音量を上げて楽しみたい。気むつかしいヒンデミットの「してやったり」という 微笑みが、きっと見えてくる。 ♪オススメCDはこちら♪ |