2010年6月6日(日) 長野県伊那文化会館 ドヴォルザーク:スターバト・マーテル |
上伊那唯一のオーケストラ、伊那フィルハーモニー交響楽団
伊那谷の音楽シーンを作っていると言っても・・・いいんじゃない? とにかく、音楽漬けの毎日を送っている伊那フィル団員さんに 音楽について"なんでも"語っていただくコーナーです。 クラッシックはもちろん、音楽だったらなんでもあり! 〜ウィリー・ボスコフスキー〜 ヴァイオリニストで指揮者だった、ウィリー・ボスコフスキー。 ウィーン・フィルのコンサートマスターだった彼は、ヴァイオリンの独奏曲だけでなく、ウィーン・フィルの精鋭たちで組織したアンサンブルや、管弦楽曲の中のヴァイオリンソロ、正月元旦の恒例ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの指揮者として数多くの録音を残し、そのどれもが良きウィーンの艶やかな音色を今に伝えています。(筆者は、ウィーンへ行ったことがないので、本当のウィーンを知りませんが…。) その中でも、気持ちのバランスが崩れたときや嫌なことがあったときはもちろん、今日一日を振り返りたいとき、明日のヤル気を盛り上げたいときにおススメの録音を紹介します。 【W・A・モーツァルト:セレナードとデヴェルティメント集/DECCA】 ウィーン・フィルの精鋭を集めたウィーン・モーツァルト・アンサンブルが、モーツァルトのセレナードとデヴェルティメントを録音しています。CDにして計8枚。 モーツァルトの「セレナード」と「デヴェルティメント」はヴァイオリン弾きにとって避けることのできないアンサンブルの宝庫ですが、これだけの曲数を同じ演奏家で聴くことはなかなかできません。(あの通称「アイネクライネ」も「セレナード」のうちの1曲です。) いくつかリリースされている録音の中で、ネヴィル・マリナーの版はスマート過ぎるきらいがあるし、シャーンドル・ヴェーグの版は色っぽさが物足りないと感じますが、このボスコフスキー版は躍動感に満ち、モーツァルトの響きを豊かな音色で録音していて、目に見えないのに、そして匂いもないのにも関わらず、五感を満足させてくれます。 おススメは、ヴァイオリンソロが活躍するデヴェルティメント第17番ニ長調K.334です。5曲目のメヌエットは、ヴァイオリン独奏曲としてシングルカット(?)されていてご存知の皆さんも多いと思います。6曲目のロンドが、他のどの演奏にも聴かれない躍動感で、ウキウキしてジッとしていられません。 【R・シュトラウス:英雄の生涯/DECCA/指揮:クレメンス・クラウス】 CDのリーフレットに「violin solo: Willi Boskovsky」と記されているので、ボスコフスキーがコンサートマスターとして曲中のヴァイオリンソロを担当しているのは間違いありません。モノラル録音を感じさせない艶やかな音色に溢れたソロです。絶版かもしれません。 【R・シュトラウス:ツァラツゥストラはかく語りき/DECCA/指揮:カラヤン】 この録音は、スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」のオープニングに用いられています。様々な情報を総合したところ、ボスコフスキーがコンサートマスターを担当している模様。 (キューブリック監督といえば、「時計仕掛けのオレンジ」やホラー映画「シャイニング」が有名ですが、シニカルなSFコメディー映画「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」がおススメ。アイロニカルで、けして気持ちの良い映画ではないけれど、何故かドキッと我が身を振り返る瞬間があります。余談でした。) 曲後半「舞踏の歌」からの流れるようなヴァイオリンソロが秀逸で美しい。弓をどう弦に擦ればこんな音がするのでしょうか。一聴の価値があります。 【ニューイヤーコンサート1979/DECCA/指揮:ボスコフスキー】 ボスコフスキーは、生粋のウィーン子です。 ご存知ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでは、ヨハン・シュトラウス父子のウィンナ・ワルツやポルカを中心に演奏されますが、創始者は、やはりウィーン子の指揮者クレメンス・クラウス。一時期、同じくウィーン子、ヨーゼフ・クリップスが指揮を執りますが、クラウスが1954年に亡くなり、あとを継いだのが彼です。1955年から1979年まで25年間に渡り、ニューイヤーのタクトを振り続けました。 (1980年以降、一度も生粋のウィーン子がニューイヤーコンサートの指揮台に立っていないことから、1979年を最後のニューイヤーコンサートと称する人もいるくらいです。) その彼最後のニューイヤーコンサート。この録音は、そのライブ録音です。(この録音は、DECCA最初のデジタル録音としても、関係者には有名です。) シュトラウス父子ばかりでなく、スッペの序曲「ガラティア」(後半にワルツが含まれています。)などマイナーでありながら名曲が演奏され、またポルカ「狩り」では熱狂した観客のアンコールにその場でもう一度演奏してしまう様子も収録されているなど、魅力いっぱいの録音です。ワクワクする時間が、CD一枚では短すぎるくらいです。 さらに、ウィンナ・ワルツの思わずステップを踏みたくなる独特の拍打ちを、十二分に堪能できます。これこそ、生粋のウィーン子!と納得するところです。 【ウィーンの小品集/ヴァンガード/ボスコフスキー・アンサンブル】 ウィンナ・ワルツは、シュトラウス父子の活躍した19世紀当時、こんな小編成のアンサンブルでダンスの伴奏をしていたのではないか、と思わせる録音です。 ひとパートが楽器1本ずつ。小回りの利かない大編成のオーケストラでは表現しえない微妙なニュアンスを表現しています。そう、ロックでもジャズでも、多彩な楽器に、迫力のある音圧に酔いしれることもあるけれど、逆にアコースティックな響きにホッとすることがあるのと同じ感覚を得られます。 さてさて、ボスコフスキーの録音をいくつかピックアップしてみました。明るくない世相続きの今日この頃ですが、難しいことを何も考えなくても、その音楽に浸れる、それがボスコフスキー。是非、一聴あれ! 2010/01/21 UP
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