上伊那唯一のオーケストラ、伊那フィルハーモニー交響楽団
伊那谷の音楽シーンを作っていると言っても・・・いいんじゃない？
とにかく、音楽漬けの毎日を送っている伊那フィル団員さんに
音楽について"なんでも"語っていただくコーナーです。
クラッシックはもちろん、音楽だったらなんでもあり！

～チャイコフスキーの魅力～

おすすめＣＤの紹介を…とお話をいただき、真っ先に浮かんだのが、
オケをやりたと思うきっかけとなったチャイ５と新世界でした。
でも、いやいやまてよ、
学生時代にクラの魅力を最大限に感じさせてくれたカール・ライスターもいいかな。
いややっぱり、音楽の奥深さや緻密さを感じさせてくれた小澤征爾＆ＳＫＯか・・・。
と、いろいろ思い浮かび、あれこれ迷ってしまいました。

そんな中、好きな交響曲は？　好きな協奏曲は？　好きな室内楽は？　好きなオペラは？
と、一つ一つ思い浮かべると、ジャンルによって作曲家がバラけてしまうのですが、
じゃあ、好きな作曲家は？　と考えると、
そこは迷わずチャイコフスキーと答える自分に気付きました。
そんなこんなで最終的に私の気持ちが行きついた
チャイコフスキーの楽曲をお勧めとして紹介させていただこうと決めました。

チャイコフスキーといえば、伊那フィルでも、
近年「ロメオとジュリエット」「チャイ５」を演奏させていただきましたし、
今年は「くるみわり人形」を演奏させていただきます。
チャイコフスキーって、演奏する側にとっても聴き手にとっても、
とても魅力的な楽曲が沢山ありますよね。吹奏楽にアレンジされた楽曲も沢山ありますね。

でも、私からは交響曲などの管弦楽曲でも協奏曲でもなく、あえて、
チャイコフスキーのピアノ曲を紹介させていただきたいと思います。
チャイコフスキーのピアノ曲は演奏されたり録音される機会も少なく、
あまり知られていないかもしれませんが、でも実はとても素敵な世界がそこにはあるんです。

では、私のお薦めＣＤ２枚を紹介させていただきます。
上原彩子さんの「グランド・ソナタ　ト長調　Ｏｐ.３７」（２００３年録音）と、
ダン・タイ・ソンさんの「四季　Ｏｐ.３７bis」（２００７年録音）です。
もともと楽曲のもつ音楽性や雰囲気の違いと、それぞれのピアニストの個性が相まって、
ある意味とても対称的とも思えるこの２枚を聴くことで、
チャイコフスキーの新たな魅力を感じてもらえるのではないかと思うのです。
「グランド・ソナタ」は、音の重なりが厚くてとても情熱的な楽曲ですが、
それを左手をとても豊かに響き渡らせパワフルな演奏をする上原彩子さんが
とても迫力ある演奏で聴かせてくれます。
一方「四季」は、各月を抒情的に描いた素朴で繊細な楽曲ですが、
それを控え目なペダリングでピアノの音一つ一つをクリアに弾くダン・タイ・ソンさんが
優しく穏やかな演奏で聴かせてくれます。
そして、唯一「ドゥムカ」という小品を、両者ともに収録していますが、
この演奏の聴き比べもとても面白いと思います。
チャイコフスキーの管弦楽曲とはまた違う音の世界を、
ぜひぜひ楽しんでみてください！

2012/05/27 UP