おかげさまで無事終了いたしました。 ありがとうございました。 +第22回定期演奏会(予定)+ 2009年12月 長野県伊那文化会館 シューマン:交響曲第3番 「ライン」 |
上伊那唯一のオーケストラ、伊那フィルハーモニー交響楽団
伊那谷の音楽シーンを作っていると言っても・・・いいんじゃない? とにかく、音楽漬けの毎日を送っている伊那フィル団員さんに 音楽について"なんでも"語っていただくコーナーです。 クラッシックはもちろん、音楽だったらなんでもあり! 〜ラヴェルのボレロ〜 ここを読まれるような方は、当然、ラヴェルのボレロはご存知ですよね。3拍子の 3/4 トン・トトト・トン・トトト・トン・トン┃トン・トトト・トン・トトト トトト トトト┃〜 と言うスネアドラム(小太鼓)が延々と繰り返すリズムに乗って、2種類の印象的なメロディーを変奏も転調も無しに速さも変わらず、ただ楽器を変えてひたすら延々と約15分間繰り返すだけなのに、最後は熱狂的に盛り上がっちゃうあの曲です。TVのCMやドラマやアニメのBGMとしても頻繁に使われていますから(フィギュアスケートでも!)、聞けばどなたでも絶対分かると思いますよ。 一般の皆さんには、おんなじメロディーとリズムを繰り返すだけの(演奏するのは)すごく簡単な曲、と思われている(?)ボレロですが、アマチュア・オーケストラが演奏することは滅多にありません。それは、えーとね、技術的にも金銭的にも政治的にも、アマチュア・オーケストラで演奏するのは古今東西屈指の難曲だからなんです。「でも、ボク、小学校の音楽会で演奏したヨ!」なんて言わないで、私のお話に少々お付き合い下さい。 ■曲の説明 CDの曲目解説を読めばすぐ分かりますし、「ラヴェル ボレロ」でネットで検索すれば情報はいくらでも出てくるのですが、私なりの(迷惑な)珍説明を少々。 元々はバレエのために書かれた音楽。ストーリーは、酒場で踊り子のおねえさんが、初めは手足を少しずつ動かしながらだんだん大きな動きのある踊りになり、周りの人も巻き込んで、最後は全員で伊那祭りのダンス・オン・ザ・ロード状態(ドンチャン騒ぎ)になってしまう。というものらしい(映画で見ただけ)。今では、バレエの伴奏と言うより、独立した管弦楽曲として非常に高い人気を誇り、(プロの)演奏会でしばしば取り上げられています。 題名の「ボレロ」はもちろん、スペインの民俗舞曲の「ボレロ」のリズムを拝借しているところから来ています。スペインの「ボレロ」はもっとずっと速いですよ。 このラヴェルの「ボレロ」ですが、クラシックのオーケストラ曲としては曲の作りがかなり異端なんですよねえ。 ■異端の説明その1 皆さんはオーケストラの一番の基本の楽器は何だと思いますか。 もちろん、ヴァイオリンです。ヴァイオリンがメロディーを奏で、ヴィオラが和声を付け、チェロ&コントラバスが低音を支え、木管とホルンが彩りを添えて、クライマックスに金管と打楽器が盛り上げ役で参加するのがモーツァルトやベートーベンの時代からずっと続いている普通のオーケストラ曲。 ところがこの「ボレロ」、曲の開始時はヴァイオリンは楽器を置いたまま。まあ、そう言う曲は世の中には他にも少々は有りますが、メロディーを弾くのがお仕事なはずのヴァイオリンがようやく弓を持ってメロディーを弾き始めるのは、曲が始まってから時間にして曲がもう2/3以上も経過してから!なんです。じゃあ、その間、オーケストラは何をしているのか!! これが実はこの曲の魅力の一つ。後でお話します。これが異端その1(笑)。 ■異端その2は、 たとえば、普段、伊那フィルで演奏する、たとえば交響曲なら、第1楽章はソナタ形式になっていて、序奏とか第1主題とか第2主題とか展開部とか再現部とかコーダとか、たくさんのメロディーが出て来て、それが様々に変化し、同時に副旋律も絡んで、調性も複雑な理論に基づいて様々に転調し、聴く者を魅了し弾く者を混乱させるのですが・・・、 ラヴェルの「ボレロ」には、そう言う要素が全く無いのです。2小節の同じリズム・パタンを169回ひたすら繰り返して、メロディーも2種類のものを繰り返すだけ。そして、転調が一切無くひたすらハ長調! 更に、テンポを落として甘く歌ったり、テンポを上げて聴衆を興奮させたり、と言った要素も一切無し!! ベートーヴェンやモーツァルトが聴いたらなんと言うでしょう!? 県歌「信濃の国」だって4番はそれまでと全然違うメロディーになってしっとり歌い上げるし、「伊那市の歌」だって途中に変拍子が、入ってちょっと、おおっと思うのにね。 「ボレロ」はクラシックの世界から見たら異端中の異端児な曲なのですが、今、私たちが聴いてもそんなに変な曲って思わないのは、 実は、同じメロディーを同じリズムに乗せてただ繰り返して転調も無しって私たちが普段一番耳にしている曲だからなんです。 J−POPも演歌もアニメソングも、8ビートのロックのリズムに乗せて1番も2番も3番も歌詞は変われど同じメロディーで転調も無し・・・。 なーんて事を延々と書いていると、「ボレロ」ってどこが面白いの! って言われちゃいそうですが、「ボレロ」の最大の魅力は「オーケストレーション(管弦楽法)」。次々と入れ替わっていくソロ楽器の妙技を聴く楽しみはもちろんですが、そのソロを引き立てオーケストラから実に様々な音色を引き出し、最後には演奏会場を興奮の坩堝(るつぼ)と化してしまう、ものすごく細かい綿密な仕掛けがあるんです。こんな一見単純な曲なのに、スコア(総譜)を見ると「えっ! ここまで細かく書いてあるの!?」と言う位細かくネチネチと書かれた仕掛けがいっぱいです。ラヴェルは細かい音符を書きながら、敵の秘密機器に潜入して敵に気付かれない様に細かく爆弾をセットし、最後にスイッチ一つで敵の秘密基地を殲滅させるような快感を感じていたんじゃあないかなあ。スコアの向こうに、自分自身のアイディアとオーケストレーションの技術に対して「ふっふっふ」と笑っているラヴェルの顔が見えるような気がします。でも、ラヴェルはこの曲に決して「愛」は注いでいないだろうなあ。直江兼続向きの曲じゃあないです。きっと。 ここまで来たら、この曲の個人的な聴き所もお話したくなって来ちゃいました。では、次は「『ボレロ』ここを聴こう」編。 ■■「ボレロ」ここを聴こう!! 「ボレロ」は、今、何の楽器がソロを取っていて、裏では何の楽器が伴奏していて、と言うことをちょっと知っておくだけで、聴く楽しみが倍増すると思うんです。ここでは、私の主観たっぷりに解説しちゃいます。変な先入観を植え付けられたく無い!!って方は、どうぞスルーを。 ■第0話。プロローグ・リズムの提示 初めに4小節間、リズムと伴奏だけの部分があります。 スネアドラム(小太鼓)の 3/4 トン・トトト・トン・トトト・トン・トン┃トン・トトト・トン・トトト トトト トトト┃〜 って言うリズム。大きさはpp(ピアニシモ:とても弱く)。 ヴィオラがピチカート(弦を指でポンと弾く奏法)で1拍めと2拍目に 3/4 ソ・ソ・(ウン)┃ソ・ソ・(ウン)┃〜 チェロがピチカートで1拍めと3拍目に 3/4 ド・(ウン)ソ・┃ド・(ウン)ソ・┃〜 たったこれだけ。しかもこの後メロディーが出てきても、このまんま20小節間も(ひたすら)同じ事をし続ける。。最初からとんでもないです。 ここだけだったら今日始めて楽器を持った人だってすぐに弾けますよ。ヴィオラは第3弦が「ソ」、チェロは第3弦が「ソ」、第4弦が「ド」に調弦されていますから、ただポロンと弾けばいいだけなんです(笑)。と、言いたい所ですが、ここがオーケストラの不思議なところ。たとえば最晩年のミュンシュがパリ管弦楽団を指揮した演奏では、たったこれだけの事なのに、濃厚なフランスの雰囲気がホワーンと香って来るんです(フランスに行ったことはありませんが)。そうしてソロ・フルートが有名なテーマAを吹き始めます。 ■第1話。フルート・ソロによるテーマAの登場 さっそく、誰でも知っている(笑)有名なテーマ(A)がフルートによってpp(ピアニシモ)で奏でられます。 3/4 ど〜〜〜しどれどしら┃どぉどらど〜〜〜しど┃らそみふぁそ〜〜〜・・・ 階名をひらがなで書くとなんともおマヌケですが、でもそんな感じ。春のポカポカ陽気の日に田んぼのあぜ道をフンフン鼻歌を歌いながら歩いているような、そんなメロディーです。音域は1オクターブ+1音(C4〜D5)。私の子供の頃、音楽の教科書にも乗っていましたし、リコーダーでも簡単に吹けちゃう。更には「かーがやく5がつのあっおぞらー」みたいな超能天気な歌詞までついていやがった。ところがねえ、単純なことほど難しいと言うパラドックスがありまして。。 そもそもねえ。ちょっとラヴェル先生。ラヴェルの作るメロディーと言えば、ちょっと儚(はかな)げで洗練されていて、たとえば一昨年伊那フィルが演奏した「亡き王女のためのパヴァーヌ」のような胸に迫ってくるメロディーが定番じゃあなかったの? ラヴェル入門が幸運にも「ダフニスとクロエ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」だった私には、初めて「ボレロ」を聴いた時、このお気楽なメロディーはある意味衝撃でした。このハ長調の♯も♭も一つも無いお気楽メロディー、後にオーケストラが極彩色に変化する際の重要なポイントになると私は思います。この田んぼの鼻歌、ソロ・フルートは終始最低音域で吹かされて、傍目で聴いているよりはお気楽じゃあないと思います。ボレロのソロが好きで休憩時間に吹いているフルート奏者を、私はいまだかつて見たことがありません。 ■第2話。クラリネット・ソロによるテーマA 同じテーマが今度はクラリネット・ソロで吹かれます。もちろんクラリネットに注目!なのですが、ここで私はあえて2番フルートに注目。小太鼓&ビオラ&チェロの伴奏隊はここでも伴奏を黙々と続けていますが(ヴィオラだけちょっと音が増える)、ここからは2番フルートがたった一人でスネアドラムと一緒に 3/4 ソ・ソソソ・ソ・ソソソ・ソ・ソ┃ソ・ソソソ・ソ・ソソソ ソソソ ソソソ┃〜 この場所(クラリネット・ソロの伴奏)だけで、一人っきりで吹く「ソ」の数、実に216個! こう言う所って、完璧に吹いても自分以外は誰もほめてくれないけれど、ちょっとでもミスするとボロクソに言われる嫌な所です。216個全部裸のソロですから、誰も注目していないのに、ちょっとでも転んだりヨタったりすればたち所に分かってしまいます。これは後に同じ事をしなければならない他の管楽器も一緒なのですが、やはり、一番最初に「ソ・ソソソ・ソ・ソソソ・・・」やらなければならないってつらいですよね。と同情してしまいますが実際に吹く人はどうなんでしょう。最近の録音では収録時に傷があっても編集時にデジタル処理をして消してしまうことが可能ですが、昔の録音では必ず誰か一人はバックの「ソ・ソソソ・・・」でコケていると言う。。 ここでの主役のクラリネット、じつに気持ちよさそうにのどかに吹いている演奏が多いです。が、実際の演奏者はどう思っているんでしょうか。かつて、帝王カラヤンがベルリンフィルでボレロを演奏しようとしたとき、ベルリンフィルにはクラリネットの神様ライスターがいるにもかかわらず、ウィーンフィルのクラリネットの神様のシュミードルをわざわざ呼んで来て、ここのソロを吹かせたことがあったと聞きました(例のマイヤー事件の後で)。のどかなソロの裏には色々と陰謀が渦巻いて・・・ ■第3話。ファゴット・ソロによるテーマBの登場 ここの伴奏は、2番フルートが1番フルートに替わってppがpとちょっと音が大きくなるだけで、残りのメンバーは今まで通りでまったく同じことを続けているのですが、ハープが入って来て急に怪しげな雰囲気になる。ファゴットのソロによってテーマBが出て来ます。これがね、大変なんだ。今まで高い音を演奏する楽器に低い音を吹かせていたんですが、今度は低い音を演奏する楽器に高い音を吹かせる。どう考えてもこれってイジメです。そして、このテーマB、ちょっと妖艶でエッチな雰囲気。今までかわいい女の子だったと思っていたら夜になったら妖艶な魔性の女になっていた!みないな。「特命係長・只野仁」の夜の顔でもいいです(笑)。 3/4 シ♭〜〜ラソファシ♭ドラソ┃シ♭ーラソシ♭ー・・・ 下はC3から上はD♭5と管楽器に吹かせるには音域も広いのですが、ファゴットと言う木管のお父さん的役割、どちらかと言うとオーケストラの縁の下の力持ちの楽器にとって、難しいソロの一つになっているような気がします。実際はどうなんでしょうか。元々はドイツ式のファゴット(バスーン)ではなくて、フレンチ・バソン(フランス式のファゴット)を念頭に書かれたソロパート。ねっとりしたドイツ式のファゴットのソロで聴いてもいいですが、明るく軽やかなバソンでぜひとも聴きたいところです。 ちなみにこの「テーマB」、CMで使われているところを見たことは一度も・・・無い! ■第4話。Esクラリネット・ソロによるテーマB ここまで木管の各首席奏者がソロを担当して来ましたので、次はオーボエが来るかなと思ったら、Petite Clarinette(俗に言うエスクラ)が来ました。吹奏楽ではごく一般的ですが、オケの中でソロを吹くのはとても珍しいんです。 ■第5話。オーボエ・ダモーレ・ソロによるテーマA ここで一転、雰囲気が明るくなって、ソロを担当するのは「オーボエ・ダモーレ(愛のオーボエ)」です。かなり珍しい楽器ですが(バッハの作品にはよく出て来ます)牧歌的な何とも言えない伸びやかな響きなんですよねえ。このソロが名手によって吹かれると本当に幸せな気分になります。A管なので実はボレロのソロは指がとてもややこしくなるんだそうです。私のスコアでは2番オーボエ奏者が「オーボエ・ダモーレ」と持ち替えるようになっていますので、先日放映のN響のボレロ(演奏会は2008年夏)では池田昭子姫先生(サインをもらってたくさんお話をさせて頂いたのでファンなんです)がソロを吹くものだと思っていたら首席の茂木先生がしっかり「オーボエ・ダモーレ」を吹いていらっしゃいました。すごく上手でした。 また裏話。牧歌的なソロの裏でリズムを刻み続けているのがここではファゴット。どう考えても細かいタンギングでリズムを刻むのは苦手そうな楽器ですが、楽譜の上では2本のファゴットが見事に絡み合って役割分担をして、ここのリズム隊をこなしています。ちょっと聴きどころ。 ■第6話。トランペット&フルートによるテーマA 今まで何もしていなかった1stヴァイオリンがやっと楽器を(膝の上に)ギターみたいに構えて伴奏を始めます(指で弾くだけ)。 メロディーはミュートをしたトランペットとフルート。どちらが主役かと言うとトランペットはmp。フルートはpp。なのに、フルートの方が聞こえる演奏って結構多いんですよね。指揮者が美人のフルート奏者をひいきにしているとか!? ■第7話。テナーサックス・ソロによるテーマB ■第8話。ソプラノサックス・ソロによるテーマB 次にどなたが現れるのかの思いきや、サックスです。サックス。オケの仕事はめったにないので、たいてい大名手が演奏しています(たとえばカラヤン/ベルリンフィルならパリからサキソフォンの神様D.デファイエが呼ばれていたそうです)。甘いクラシカル・サックスの音色を堪能して下さい。 ■第9話。ホルン・チェレスタ・ピッコロによるテーマA さてここで、とても不思議な響き、パイプオルガンそっくりな響きがメロディーを奏でます。ここの部分、始めて聞いた時にものすごく不思議でした。種明かしは、ホルンに小さな音でチェレスタを重ねて、更にもっと小さな音で2本のピッコロを、それもホ長調とト長調と言うホルンとは違う調で旋律を吹かせる、と言うシロウトでは想像もつかない必殺技が使われています(ここら辺の講釈はWikipediaの「ボレロ」の項に詳しく出ています)。 ところで「ボレロ」には、作曲者ラヴェル自身による2台のピアノで連弾用の編曲があります。オーケストレーション命のこの曲から多彩な音色を取り払ってピアノで弾いてしまったらすごくつまらない曲になってしまうような気がしますが、それがなかなかどうして。ピアノだけなのに多彩な音色がして結構楽しめます。そして、この、ホルン・チェレスタ・ピッコロの部分はピアノ連弾版でもちゃんとパイプオルガンの響きがする! ボレロはただオーケストラの楽器を上手く調合しただけの曲ではなく、曲の骨格から既に多彩な響きがするように出来ていたんだと感心しました。 ここで一つ、無駄話。本物の「チェレスタ」を近くで見た、とか、弾いたことがあるという人はあんまりいないと思います。私も借りてきた「チェレスタ」を遠くのほうから見た事があるだけ。「チェレスタ」がオーケストラで活躍する曲と言ったら「チャイコフスキー」の「くるみ割り人形」の「金平糖の踊り」が有名でしょうか。バルトークの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」はあんまり一般的ではないですね。さてそのチェレスタ(鍵盤付き鉄琴と言っちゃっていいのかな)、借りようと思ったらレンタル料がものすごく高かった記憶があります。ところが「ボレロ」では、「チェレスタ」使用されるのはこの第9話のみ。それも、パイプオルガンの鍵盤を押す時の「カタッ」と言う効果音として耳に届くだけで「チェレスタ」の音そのものは他の楽器と溶け合っちゃってて聞こえない(アンサンブルが完璧だった時のお話ですが)。知らない人が「ボレロ」の演奏を見ると「孫Ruiがチェレスタのところに座っていたけれどいつ弾いたんだろう?」と言うことになってしまいそうです。テレビで「チェレスタ」のパート譜が映ったことがあったのですが、見事に紙切れ1枚で真ん中にちょっと音符が書いてあるだけでした。 更にもう一つ無駄話。ラヴェルが想定していたホルンはもちろん「コル」。根強い隠れファンがいるバソンと違って、ほぼ絶滅してしまったフランス式のホルンです(製造も既にされていない模様)。ロータリーバルブのかわりにピストンになっているので見た目ですぐ分かりますが、一般的なホルンと構造も奏法も違って、とにかく宇宙的な明るい音がします。CDでは伝統的な「コル」のソロが聴ける物が結構あるんですけれどね。アマチュアで「コル」を吹いている人はまだいるみたいですが、プロでは故・千葉馨先生がご自身のコレクションの「コル」を使用して「亡き王女のためのパヴァーヌ」のソロを吹かれたのを見たのが最後だなあ(黛敏郎先生が司会をされていた頃の題名の無い音楽会)。本家フランスのオーケストラでも1970年代前半に一斉に滅んだ模様。「コル」だとフランス以外のオーケストラで仕事が出来ないと言うホルン奏者の経済的な理由のようです。フランスの古典芸能楽器「コル」の楽器と奏法が廃れてしまうのは個人的にとても残念なのですが、この第9話、「コル」にチェレスタとピッコロを重ねてこそ、天から光が降って来るような響きになるのではないかと(勝手に)思っています。 ■第10話。オーボエ・オーボエダモーレ・コールアングレ・クラリネットによるテーマA 高価な3種類のオーボエ属によるとてもお金のかかった(笑)部分なのですが、前後が強烈なので(爆)、意外と地味に過ぎちゃう事が多いんですよねえ。ここがばっちり決まると大変に雅やかな響きがします。 伴奏の第2ヴァイオリンとヴィオラに注目。2群に分かれてレースの編み物のような大変に複雑な楽譜を弾いているのですが・・・ ■第11話。トロンボーン・ソロによるテーマB ここに来て急にステージ上に暗雲が立ちこめ(伴奏のオケに高い音が一切無くなる)、オーケストラに緊張が走ります(のような気がする)。「ボレロ」最大の難所、トロンボーン奏者の人生最大の危機!です。詳しくは後ほど。。 ■第12話。木管群によるテーマB そして、ここに来ると、命が救われたような、人生最大の危機を乗り越えたような安堵感でいっぱいになりホッとします。一生懸命演奏を続けている皆さんには申し訳ないのですが。 ■第13話。木管群と1stヴァイオリンによるテーマA 冒頭にお話したとおり、曲の2/3が既に終わってしまったこの時点でようやくヴァイオリンが普通に楽器を構えて弓を持ち、メロディーを弾き始めます。目の前にたくさんいる人たちは実は「オーケストラ」だったんだ、と気付く瞬間(笑)。ここの場所はみんな仲良くユニゾンで。 ■第14話。木管群と1st&2ndヴァイオリンによるテーマA この場所がおそらく「ボレロ」の一番有名なところ。昔々のホンダ・プレリュードのCMを初めとして、「ボレロ」がコマーシャルで使用されるのは大抵この部分。個人的には「ボレロ」でオーケストラが一番美しく鳴る所だと思ってます。この後は喧(やかま)しく鳴る、になっちゃうからね。ヴァイオリン「全員」と木管群でメロディーが3和音で(「並行音程」ではない。全員ハ長調)5月のさわやかな太陽の光のように曲が流れていきます。 ■第15話。ピッコロ・フルート・オーボエ属・トランペット・1st&2ndヴァイオリンによるテーマB 高い音が出る楽器ばかりがあまり高くない音から(笑)テーマBを演奏開始。でも、テーマBは2オクターブ以上の音域に渡っているので、だんだん音が下がってくるとどうなるかと言うと楽器の限界を超えて音が出なくなっちゃう。で、どうするかと言うと、似た様な音(?)のもっと低い音の出る楽器に責任を押し付けて吹くのを止めちゃう(笑)。一番分かりやすいのが、この中で一番デカイ音を出す(あたかも自分のソロのように吹いている)1番トランペット。いよいよ音が低くなって出なくなると4番ホルンに旋律を丸投げしちゃう。だから4番ホルンはトランペットみたいに輝かしくブリブリとオーケストラを圧倒して旋律を吹かなければいけないと思うのですが、無いんですねえ、そう言う演奏。4番ホルンって慎ましくで控えめで。ボレロの4番ホルン、旋律吹く所この一瞬だけですから、ぜひとも下吹きホルンの意地を聴かせていただきたいです。ここの一瞬の代役、バスクラリネットもやってるんですが(替わりにピッコロが抜ける)聞こえるかなあ? ラヴェルの頭の中の音のパレットには必要だったのでしょうね。 ■第16話。木管群・トロンボーン・チェロ以上の弦楽器全員によるテーマB 相当混沌としてきましたが、ここまで来てようやくチェロにもメロディーが回って来ました。でも、今回のたった1回だけ。1番トロンボーンなんて3回もメロディー吹くんだもんね。ふっふっふ。日ごろの恨みじゃ!! でも、(曲がそろそろ終わりそうな)ここまで来てようやく楽器を構えた暇なパートがあります。3番トロンボーンです。1番に比べて極度に出番が少ないです(1番はこれ以前にソロの他に伴奏パートもこなしている)。楽器を構えても最後まで一人で目立つことは何一つせず伴奏の一員に徹します。。「びよら冗句」に代表される楽器別ジョークのトロンボーン編でこのあたりの事を無茶苦茶言われています。 ■第17話。フルート&ピッコロ・ピッコロトランペットを頭としたラッパ隊・サックス隊・1stヴァイオリンによるff(フォルテシモ)のテーマA いよいよ、曲もクライマックス!! ピッコロトランペットを頭としたラッパ隊が何とも眩(まぶ)しいです(ラヴェルの指定はピッコロトランペットではなく、軽やかで「品のある」音が出るD管のトランペット)。ここの場面は聴いていて本当にスカッとしますね。ラッパ隊にはなんとかバテないで最後まで戦い抜いてもらいたいものです。 スネアドラムは倍増。伴奏の弦楽器は4本の弦すべてを同時に鳴らしてギターのようにジャカジャカとリズムを刻みます(一応ピチカート)。 ところがこのお祭り騒ぎの中で、たった一人、吹くのを止めちゃう管楽器がいます。コールアングレ。印刷ミスじゃあなくて明らかに意図的に出番を外している。(ここの喧騒の中で)ラヴェルにはコールアングレの響きは必要なかったんだよ、と言うのが一般的(?)な説ですが、コールアングレ、吹いても聞こえないだけじゃあ。リードももったいないしお休みしてても全然問題ないですが、お客さんには明らかに吹くのをサボっているようにしか見えないという。。 ■第18話。第17話のメンバーにトロンボーンも加わってテーマBをワメキたてます。 ここでは伴奏の弦楽器は弓を持って猛然とリズムを弾き出す。地響きが聞こえてきそうです。響乱状態。 ■第19話。突然の転調 今までずうぅっとひたすらハ長調だけでしたが、テーマBの最後が「あれ、違うよ!?」と思うまもなく突然、ホ長調へ転調(練習記号「18」)。耳が突然異次元に飛ばされたような錯覚に陥ります。暫(しば)しの間、ホ長調の乱痴気騒ぎをした後。 ■第20話。大響乱。突然の崩壊。曲の終了 ハ長調に戻りますが、弦は狂い挽き(弾くじゃあなくて「挽く」ね)、管は吼えて喚(わめ)き立て、スネアドラムは叩き狂う。バスドラム(グランカッサ)がオケに向けて大砲をぶっ放し、被弾したシンバルとドラが大爆発をし、トロンボーンがお下劣にグリッサンドをして吼える(そして更に、興奮した弦楽器奏者が楽器を弾きながら演奏に合わせて叫びだしてしまうのは、アバド/ロンドン交響楽団の演奏)。バスドラムのトドメの一撃がオケに叩き込まれ、ついに延々と続いてきたボレロのリズムは止まり、オケは断末魔の叫び声を挙げて時が一瞬止まったように聴こえた後、一瞬にして崩壊して崩れ落ちて曲は終わります。大団円と言うよりは全ての崩壊(と感じるのは私だけ?)。ラヴェルが想定していたストーリーはここで主人公が死を迎えると言う恐ろしい結末と言う噂も。演奏が上手く行けば、ここで盛大な「ブラヴォー」がお客様より頂けるはずなんだけれどね(笑)。 ■■「ボレロ」がアマチュアオーケストラ(伊那フィル)で演奏困難な理由 ここでは「ボレロ」がいかに演奏困難か言い訳を(笑)述べてみたいと思います。 ■技術的な理由 これはなんと言っても管楽器のソロが入れ代わり立ち代わり前半2/3の間延々と続くこと。 4小節くらいのソロなら嬉々として(?)吹くアマチュア管楽器奏者も16小節も延々とそれも全くの裸状態でソロを吹くのはかなりプレッシャーと言うもの。それも全く同じメロディーを吹くんですから一人一人が比べられて、技術的なこと、音楽的なセンスがもうバレバレです。その上、お客さんは小学生がリコーダーやピアニカで演奏できる簡単な曲だと思っているから始末に悪い(苦笑)。派手な超絶技巧やここぞとばかりの泣かせ節があるわけでも無く、吹けて当然!と思われますから、ボレロをやりたいと言う管楽器奏者はよほどの目立ちたがり屋か変人奇人です。 それと弦楽器。いつもたくさんメロディーを弾いている弦楽器にメロディーが無い! ほとんどの時間、ひたすら単純な伴奏に徹している。これを弾きたいという人は・・・いないだろうなあ。。オーケストラはメンバーの大半を弦楽器奏者が占めます。伊那フィルの飲み会の出席者は一時期弦楽器奏者だけでした(さすがにこれはオケ界では異常現象です。普通は金管がのさばる)。弦楽器の意思はオケの意思です。 ■経済的な理由 伊那フィルは極々普通の2管編成のオーケストラですから、ボレロを演奏するとなると足りない楽器がたくさん出てきます。オーケストラに足りない楽器はどうするかと言うと、 1.楽器を借りる 2.楽器付きで演奏者に来てもらう どちらにしても先立つ物は「お金」 ・「ボレロ」にかかる特別費 スコアを上から見ていくと、 ・まず、オーボエ・ダモーレ。これをアマチュアで持っている人はあんまりいないなあ。演奏者付きで○○○円 ・コールアングレは、車を買う代わりにコールアングレを買ったって人、結構いるかも。 ・Esクラリネット。バス・クラリネット。これは近隣の吹奏楽団にお願い。オケ団員で自分で持っている人もいます。 ・コントラ・ファゴット。意外とオケでの使用頻度が高いのですが値段が半端じゃないんですよねえ。車数台分(まあ、弦楽器は、もっと高いですが)。これは・・・何とかする。 ・金管は普通ですが(ピッコロTpはメサイアやバッハで使うから大抵みんな持っているし) ・サックス2名。うーん。地元吹奏楽団の名手に頼むかプロを呼ぶか。。 ・チェレスタ。これはもう借りるしかない。 ・ハープ。プロの先生に楽器と一緒に来て頂く。 ・打楽器はティンパニとスネアドラムとシンバル位はありますが、 ・大太鼓(グランカッサ)・銅鑼(タムタム)は近隣の吹奏楽団か高校にお借りする。 ・そして、弦楽器。なお一層、団員を増やすように努力する。。 (人数が足りない時はエキストラをお願いしなければならない) さて、合計おいくらになるでしょうか。 ■政治的な理由 プロはオケの経営のことを考えて聴衆のためにプログラムを考えますが、アマチュアは特別な理由が無い限り自分たちが演奏したい曲をプログラムに選びます。 (お客さんのことは大抵考えていない) 「ボレロ」も私の知る限り、過去2回、伊那フィルの選曲会議の俎上(そじょう)に上ったことがありますが。。 「えっ、やだーー!!」 と、木管楽器。 「だってつまんないもん!」 と、弦楽器。 「お金かかるよ。無理だよ!」 と運営サイド。 こうしてあっさり第1次予選で姿を消したのでした。当選する日は遠い。。 ■■それでも私はボレロが好き 以上、聴いて楽しく、演奏するのはとてつもない困難が待ち受けているボレロですが、それでも私が「ボレロ」に固執するのはなんと言っても11番目に出てくるトロンボーンのソロ。 なぜかと言うと、そもそも、オーケストラのトロンボーンってホントっっっ!に出番が少ないんです。ベートーベン大先生が名曲「運命」の最後の楽章(だけ)に トロンボーンを使って頂いたおかげさまで(音楽史上交響曲で初めてのトロンボーン使用)、なんとなくオケのレギュラーメンバーのような顔をしていますが、アマチュアオーケストラで演奏するような曲ではトロンボーンが無い曲の方が多い! そして、せっかく出番があっても、たとえば、今年、伊那フィルが定期演奏会で演奏するシューマンの交響曲「ライン」は、終楽章(第5楽章)、みんなが楽しく演奏をしているのに、トロンボーンだけひたすら静かに座り続けて、曲があと1分で終わる!って時にようやく楽器を持つ!! そんな世界です(4楽章のコラール聴いてね)。 そんなトロンボーンがオーケストラの有名曲で延々と長いソロを吹くってのは、古今東西見事に「ボレロ」ただ1曲! ソロ、と言うのなら、モーツァルトのレクイエムとか、マーラーの交響曲第3番に大きなソロがありますし、シベリウスの7番、R.コルサコフのシェエラザード、ショスタコーヴィチの4番、バルトークの中国の不思議な役人(不思議なマンダリン)、ヤナーチェクのシンフォニエッタ、等々思い浮かびますが、 飛びぬけてインパクトが強いのはやっぱり「ボレロ」のソロです。 そもそもラヴェルは、ジャストロンボーンのトミー・ドーシーの影響でトロンボーンに「ソロを吹かせる」事を前提にテーマBを作曲したそうで、原案では更に高い音を吹かせようとしていたとか(※1)。トロンボーン吹きとしてはさすがにそれはご勘弁を、と言うところですが、初めに音楽有りきでは無く初めにトロンボーン有りき。うれしい話です。 (※1)出典:レコード芸術07年5月号(音楽の友社) ■ボレロとの出会い これだけの有名曲ですので、ボレロのトロンボーン・ソロの楽譜はトロンボーンの教則本に載っていました。全曲初めて聴いたのは高校1年だったかなあ(中学生の頃かもしれない)。FMラジオのクラシック音楽のリクエストコーナーで流れたんじゃあないかと思います。この「ボレロ」のトロンボーン・ソロが衝撃的でした。 その頃、ロシア(当時ソ連)の名手、ヴィクトル・バタショフの影響で豪胆なトロンボーンを目指していたのですが、このラジオから流れてきたトロンボーン・ソロは、甘く自由に官能的に歌ってとても魅力的でした。ところがこれが誰の演奏なのか分からない。悶々とボレロ探しの旅が始まります。大学3年の時に、これがカラヤン指揮ベルリンフィルの1966年録音のボレロで、トロンボーン・ソロは名手ヨハン・ドムス教授だとやっと分かりました。 ボレロのトロンボーン・ソロとモツ・レク(モーツァルトのレクイエム)のトロンボーン・ソロは学生時代は吹くと必ず先輩に捕まって「それでも上手いつもりか!!」て延々とお説教をされる禁断の曲(笑)でした。 だから、人目が有る時は教則本をさらって人がいない時にコソコソ吹くと言う「逢い引き」の関係です。 ところが、若さゆえの過ちと言うか、やっちまったな〜。 大学4年の時、卒業生が好きな曲を演奏していいよと言う「野獣を野放しにする」みたいな「卒業記念演奏会」と言う「演芸会」(笑)が有りまして、コンチェルト(ピアノ伴奏で)を吹いた後、アンコールの呼び声も無いのに4手のピアノ伴奏とスネアドラム付きでボレロのソロを吹いてしまいました。 カデンツァを自分で勝手に難しく書き換えて崩壊していたコンチェルト本編とは違って、アンコールのボレロはかなり上手く行った様な気がします。録音が残っていないので何とでも言えますが(笑)。「お前、(アンコールの)ボレロが吹きたくて、わざわざコンチェルトを吹いたんだろう」と友達に言われました。 それから20年。トロンボーンの吹き方も、トロンボーンのありかも、トロンボーン吹きだったことも忘れて平和な日々を送っていたのですが(チェロを挽き始めたと言うかなり大きな過ちは犯しましたが)、私は人生の何かを誤って、06年11月の演奏会より、伊那フィルのトロンボーン奏者に成りすましてステージに座っています。まさか、まだ音が出るとは思っていなかったのですが、オケで吹く様になるとだんだん欲が出て来てこっそりと陰でボレロを吹いたりして・・・ 一昨年の春、木曽の小学校に伊那フィルのファミリーコンサートでお邪魔した際に、ちょうど児童の皆さんが音楽会の練習で「ボレロ」の練習をしているとかで、本番前の子供たちが楽器と触れ合う時間に学校の先生に「ボレロを吹いていただけますか?」と「あっさり」言われ、5,6人の子供に囲まれて「あっさり」吹いたのが人生2回目(笑)のボレロの人前での演奏。ミスせずちゃんと吹けたと思います。子供たちの感想は「楽譜を見なくても演奏できるなんてすごい」でした。。世間一般の人は、トロンボーンは息を入れるとピアニカみたいにすぐ鳴ると思っているみたいです。 ■ボレロのトロンボーンの魅力&魔力 そりゃあ、何といっても「難しい」事でしょう。音楽の教科書に載っている「トロンボーンの音域」の表の最高音(B♭4:俗に言うHigh-B♭)から始まって、下がるんじゃあなくD♭5まで上がって行く! これを曲が始まって10分ほど楽器を吹かずにいた後にいきなり大ソロとして吹く。最近は演奏技術が上がってそうでもないですが、以前はプロでも、このトロンボーン・ソロの部分は演奏事故多発箇所で、ラジオでボレロの中継なんてあったもんなら、それこそ、手に汗を握って正座して聴いていました(で、このソロで音を外すんだな。これが)。1981年にカラヤン&ベルリンフィルが来日して「ボレロ」演奏したことがあります。FMラジオで生中継されていて、どんなに素晴らしい演奏を聴かせてくれるんだろう、と、期待に胸躍らせラジオの前で正座をして聴いていたのですが、なんとトロンボーンのソロがボロボロで大変にショックを受けた事があります。 (この時のソロは、現 Philharmonisches Staatsorchester Hamburg 首席奏者の Eckart Wiewinner氏らしい。当時、この大失敗が原因で、ベルリン・フィルを首になったとか自殺したとかいろんな噂が流れました) ここまでリスキーな「ボレロ」のトロンボーン・ソロですが、そのリスクを補って余りある魅力。こんなにトロンボーンが美しく妖艶に歌えるソロは「ボレロ」だけだと思ってます。まあ、元々トロンボーンのために書かれて、その他のテーマBを演奏する人たちは「おまけ」ですからねえ(出た!トロンボーンの暴論)。 ■■■お勧めCD 少々お話が長くなってしまいましたが(殴)、「CDの紹介」をして下さい、というのが原稿依頼のお題ですので「CDの紹介」をさせて頂きます。「オーディオ・マニア」でも「ボレロ・収集家」でもないので、そんなにたくさんの演奏を聴いたわけではないですが、お気に入りの演奏を少々。 1.クリュイタンス・パリ音楽院管弦楽団 とても色鮮やか・フランスの香りがプンプン。 バソン、コルと言ったフランス式管楽器の音色が魅力的。 各管楽器のソロは(意外と)楽譜に忠実でテンポを揺らしたりしていない。 時々リズムが転んでいるのがお愛嬌。 最後の盛り上がりも素晴らしい。 昔からの定番ですが、今でもやっぱりこの演奏が1番でしょうかね。 ラヴェル:ボレロ、他 価格:¥ 1,500(税込) 発売日:2007-12-26 2.カラヤン・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団(1966録音) 管楽器がめちゃくちゃ上手い。当時のベルリンフィルの木管の神様たち! 各ソロはテンポにとらわれずに意外と自由に吹いている感じです。 ヨハン・ドムス(Johan Doms)教授のトロンボーンの巧さ!! 今でもこのトロンボーン・ソロが最高の1番です。 フランスの香りとは違うのかもしれないけれど、とっても艶っぽいボレロ。 最後の盛り上がりの(例の)カラヤンレガート的な演奏は、好き嫌いが分かれると思います。 ラヴェル:作品集 価格:¥ 1,500(税込) 発売日:2005-03-23 カラヤン・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団(1966録音)のボレロ収録 3.ショルティ・シカゴ交響楽団 とにかく上手い!! 成層圏をジェット機でぶっ飛んでいるような演奏。 最後の盛り上がりがピカイチ。爽快そのもの。 名手ハーセス率いるトランペット隊が最高のキラッキラ!の演奏を披露しています。 でも、フランスのエスプリ的香りはあんまり無いかも。 今から20年以上前のブラス少年がみんなあこがれた「ショルティ・シカゴ」ですよ!! 弦楽器の方も偏見を持たずに聴いてみて下さい。 ラヴェル:ボレロ 価格:¥ 1,200(税込) 発売日:2007-02-21 4.佐渡・ラムルー管 録音がすごくいい。 とても洗練されたオシャレな演奏。 楽器間のバランスも良い。 ボレロ! 価格:¥ 2,520(税込) 発売日:1999-06-23 5.ブーレーズ・BPO オーケストラがとても上手い(当たり前ですが) ソロもアンサンブルも完璧。 熱気に欠けることも無い。 ラヴェル:ボレロ、スペイン狂詩曲、他 価格:¥ 1,800(税込) 発売日:2008-01-23 その他、フランスの香りプンプンの「ミュンシュ・パリ管」、ものすごく遅いけれど有無を言わせぬ説得力がある「チェリビダッケ・ミュンヘンPO(1983年のライブ)」、とってもおしゃれな「デュトワ・モントリオール管」他、名盤、多数。 まだっ!まだ!!語りつくせないボレロですが、1000文字位の軽いエッセイのつもりが15000文字を超える書き下ろし大作になってしまいました。。 私がトロンボーンが吹けるうちに伊那フィルで「ボレロ」を演奏する日が来るとは到底思えませんが、聴衆の皆様の熱いリクエストがいつの日か「バーナムの森」を動かす日が来るかもしれません。どうぞ「ボレロ」を聴きながら、トロンボーンのそしてオーケストラの魅力をたっぷりとお楽しみください。 2009/02/16 UP
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